木材は他の素材と異なり木目、色、硬さ、質量など種別により個性があります。また同じ木材でも育つ環境によって変化します。故に同じものが一つと無いところが木の魅力にもなっています。木彫作品を作る時にどの木材でどのように木取りするかが最初の鍵になります。主に木彫に使用する木材を紹介します。
木彫に適した木材の条件
適度な堅さ
木材は堅すぎると加工するのに労力を使いますし、鑿の刃こぼれも生じ易くなります。また、柔らかすぎると加工しやすい反面、傷やへこみ易くなります。鑿の刃との摩擦も大きいため、直ぐに切れ味が落ちてしまいます。
木肌の美しさ
木材の色、木目の様子も材木選びには重要になります。ケヤキなどの木目が強い木材だと木目が細かい彫刻を邪魔をする事もあるので注意。また割れ、腐り、節等が無いものを選ぶ必要があります。
粘り 弾力
木材には金属など無機質なものに比べて種類によって、特有の粘りや弾力があります。粘りや弾力がないと直ぐにポキッと欠けてしまったり、鑿で削った痕の艶が上がりません。
木彫材料の種類
国産材
楠(クス)
常緑広葉樹 産地 九州など
楠材は刃通りがよく、適度な硬さで木目も邪魔せず彫刻材として最良と言えます。楠は昔から樟脳として使われ、芳香性があり、腐りにくい性質があります。粘りもあるので欠けにくく、彫刻欄間など細かい仕事に向いています。その反面、水分が抜けにくく、上手く乾燥させないと反ったり割れる恐れがあります。
欅(ケヤキ)
落葉広葉樹 産地 本州、四国、九州
欅材は木目がはっきりしていて美しく、強度があり、年輪幅が狭い材ならば乾燥時の狂いは少ないです。小さく繊細な作品を作る時は木目が返って彫刻の邪魔をする事もあります。日本の広葉樹としては最も良材と言えます。社寺彫刻や天神様などに欅材を使用する事が多いです。
桜(サクラ)
落葉広葉樹 産地 本州、四国、九州
桜材は強靭で木目が緻密で光沢もあり、彫りやすい材料の一つです。高村光雲をはじめとする明治期の名だたる彫刻師たちも好んで使用していました。桜材は彫ったなりは肌色に近く、年数が経過するにつれて飴色のような味わい深い色味がついてきて楽しめます。彫刻に使う桜材はヤマザクラが主でソメイヨシノやミズメザクラとは違います。
檜材(ヒノキ)
常緑針葉樹 産地 木曽など
檜材は柔らかく木肌も美しく彫り安い事から昔から仏像の材料として使用されてきました。檜材でも厳しい寒さで育った木曽檜などが、木目が積んでいて彫刻材としては最高です。白く上品な木なので、仏像やお雛様、能面などに使用します。
榧材(カヤ)
常緑針葉樹 産地 四国、九州など
榧材はきめが細かく、弾力があり、緻密な作業に向いています。色合いは光沢のある淡黄色で、特有の芳香を放ちます。耐水性に優れ、風呂桶や船に使われていいました。榧材で作るもので現在もよく目にするものは将棋の碁盤です。
タモ材
落葉広葉樹 産地 北海道など
タモ材は黄白色ですが、木目はケヤキに似ていてケヤキの代用品として使われてきましたが、最近ではテーブルや家具に使用されて身近な木材になっています。ケヤキよりも柔らかく加工しやすいですが、鑿艶はあまりありません。私の展覧会の作品は主にタモ材をつかっています。幅の広い材が手に入り易く、比較的安価だからです。着色、艶出しをする事でデメリットを補っています。
朴材(ホオ) 桂材(カツラ) 銀杏材(イチョウ)
ホオ、カツラ、イチョウとも適度に柔らかく、弾力があり、鑿艶もよく、彫刻を始めたばかりの方や、女性の方でも扱い易い木材です。木目もおとなしいため、レリーフにも使えます。木彫教室や、学校教材などでも使われています。Amazonなどでも手軽なお値段でも購入できます。
ひのき角材(ヒノキ・桧・檜)木彫用 彫刻用 木像用 70ミリ×70 ミリ×260ミリ 節なし材
外国材
世界三大銘木
- マホガニー
- ウォルナット
- チーク
マホガニー
マホガニー材は赤茶色で木目が柔らかく加工しやすいため、西洋では昔から高級家具やバイオリンなどの高級楽器に使われてきました。輸出入に証明書が必要なほど希少性の高い木材です。
ウォルナット
ウォルナット材は黒褐色の木目が美しく、年月を経過するほど色味が濃くなり、風合いがあります。加工もしやすいので家具やインテリア用品に使われています。
チーク
チーク材は独特な光沢が美しく、手触りも良いです。堅いので加工するのが大変ですが、耐水性に優れています。家具や豪華客船のデッキなどに使われています。
その他
- カールフィリップス材:カールフィリップス材は木彫に最適な柔らかい木材とされています。刃物がスムーズに入り、彫刻がしやすい特徴があります。また、美しい色合いや木目も特徴です。
- バスウッド:バスウッドは木彫に非常に適した柔らかい木材であり、初心者にもおすすめです。刃物が容易に入り込み、スムーズな彫刻が可能です。また、木目が均一で柔らかい色合いを持つのも特徴です。
- メイプル:メイプルは木彫にもよく使用される硬い木材の一つです。密度が高く、耐久性があります。特に細かな彫刻や細部への刃物の入り込みが求められる場合に適しています。
- オーク:オークは木彫に使用される一般的な木材です。非常に堅く、強度があるため、大きな作品や彫刻に適しています。美しい木目や温かみのある色合いも特徴です。
これらの木材は一部ですが、多くの木彫家によって広く使用されています。材料の選択には個人の好みや作品のデザインによっても影響を受けることがあります。また、木材は自然素材であるため、湿度や温度の変化にも注意が必要です。木彫を行う際には、使いたいデザインに合わせて適切な木材を選び、丁寧に取り扱うことが重要です。
木材のこだわり
当工房で使用する木材は銘木店に実際に行き自分の目で選んだ木材を仕入れています。
私の住む井波は木彫に携わっている人が多いので、木彫材料を販売している店が何件かあり、木彫の好きな方はわざわざ遠方から買いにくる程です。
木彫の仕事をしていると、よく木彫材料についてのご相談をいただく事があります。
木材の切り売りなどのご相談があれば下記を記入して(本格的に木彫を彫ってみたい方)
- サイズ(縦×横×高さ)
- 何を彫るか(立体、レリーフ)
- ご予算
を問い合わせフォームにてご相談ください。