作家の道具箱
木工(木彫) ―鑿―
今回は木彫に欠かす事の出来ない道具である鑿について説明したいと思います。鑿は大まかに荒彫り用の叩き鑿と仕上げ彫り用の仕上げ鑿(彫刻刀)に分かれます。
叩き鑿 … 刃物が厚く、柄の先端に環状の金属(かつら)がはめてあり、木槌または金槌で叩いて大まかな形を作る。
仕上げ鑿(彫刻刀)
刃物が薄く、柄の先端にかつらはなく、細部を彫りあげる。
さらに叩き鑿、仕上げ鑿(彫刻刀)それぞれに用途の違いに合わせなど形の異なる種類があります。
- 平ノミ…大まかな彫刻、平面、直線に用いる
- 内丸ノミ…円孔や凹面の溝に用いる
- 三角ノミ…線彫りに用いる
- 外丸ノミ…垂直に凹面を彫る
- 平曲ノミ…平ノミが届かない奥を彫る
- 内丸曲ノミ…丸ノミが届かない奥彫る
- 甲丸ノミ…平ノミの角を丸めたノミ
- 箱ノミ…直角に角が曲がったノミ
- 小刀…細部や地紋彫りに使う
さらにそれぞれ形の違う種類のノミにも大小さまざまな寸法があり、無数の組み合わせになります。なのでその数は作家それぞれながら100本以上の鑿が必要とされます。
私の木彫入門後最初に行った作業は自らの彫刻刀の柄の加工でした。角材にドリルで穴を開けて、鑿を差し込み、自分の手に馴染む太さまで鉋で丸く削ります。仕事中、入門間もない頃には使いたい鑿を数十本の中から探すのも時間がかかっていましたが、今では柄の形を見ただけで鑿の形が分かるくらい、自分の一部になりました。生涯共にする道具、これからも大事にしたいと思います。